西武鉄道といえば、大手私鉄の中でも営業キロ5位を誇り、また著者も幼少の頃から慣れ親しんだ鉄道会社である。池袋線、新宿線を中心として大小さまざまな支線が接続しているが、一つだけ孤立した位置を走る路線がある。
それが、武蔵境〜是政を結ぶ西武多摩川線である。6駅8kmの短い路線だが、銚子電鉄や流鉄よりも営業キロは長い。この路線には今もなお新101系が走っており、なんとなく乗りたくなったのもあって、訪れてみた。なお、2022年11月のことである。
是政駅まで
西武多摩川線は武蔵堺のみで他社線と接続しているため、鉄道だけで乗りに行こうと思ったら武蔵境駅から単純往復することになる。これでは面白くないため、是政駅まで近隣の駅から歩いて行くことにした。地図上の最寄駅はJR南武線の南多摩駅で、歩いて10分ほど。前回訪れた時は府中本町駅から歩いたが、20分ぐらい歩いた気がする。
なお、府中本町駅から行く場合は
改札を出て右側に進み、
競馬場に続く通路を通って行くことになる。府中街道のところで通路を降り、ずっと道なりに南下すれば良い。
府中本町駅では、競馬の開催日には臨時改札口がオープンする。こちらを使うと30秒ほど短縮することができる。
今回も府中本町がスタート地点だったが、天気も悪くなかったので、最寄駅である南多摩駅から川を渡って乗り換えるルートを試してみることにした。
南多摩駅は、南武線の川崎行きに乗車して一駅。南武線の上下線で武蔵野線のホーム(写真に見えているホーム)を挟む構造になっており、川崎行きの線路は府中本町に着く直前に武蔵野線を潜って来る。その関係で、南武線の川崎方面のホームだけ一段低くなっており、他のホームと少し離れている。
せっかくやって来た快速電車を見送り、その次の各停に乗車した。府中本町を出てしばらくすると、多摩川を渡る(進行方向は右側)。南多摩駅から、向かいの水色の橋を渡ったところが是政駅。
というわけで、南多摩駅。駅は東京都稲城市に所在するようで、多摩川を渡ったら神奈川県というのはもう少し南の地域の話らしい。
駅を出たら左手、橋のある方に向かって歩いた。
先ほど見た橋を徒歩で渡ることになる。車の往来は盛んだったが、徒歩もしくは自転車で渡る人は少なかった。
先ほどとは逆に、電車の通る鉄橋を望む。ちょうど南武線のE233系が通過していったが、暗い写真しか撮れなかった。
野球の試合などで賑やかな河川敷の雰囲気を楽しみながら橋を渡ると、不意に是政駅が現れた。
住宅街にひっそりと佇む是政駅。終着駅だが、少し控えめな存在感。元々は多摩川の砂利の輸送に建設された路線だということを思い出させるように、駅前に砂利が山のように積まれていた。
是政駅
是政駅の全貌。平屋のコンパクトな建物。
改札を通ると、そのまま一面一線のホームに続く。
多摩川線は6月20日に100周年を迎えた。西武池袋線が数年前に100周年を迎えていたが、この路線も同じぐらいの歴史を持つようだ。
駅名標。
時刻表を撮り忘れたが、ダイヤについて触れておこう。多摩川線は、平日だろうが土日だろうが、また朝だろうが昼だろうが12分おきのダイヤを基本としている。伊豆箱根鉄道の大雄山線でも同じようなものであった。交換駅が限られている単線の路線だと運転間隔に制約が出てしまうので、自ずと朝から晩までパターンダイヤが続くことになってしまう。
また、是政から武蔵境は13分、往復で26分となり、折り返し時間を加味すると36分で1列車が一周することになる。3編成で賄える運用となっている。
折り返しとなる新101系が入線した。行き先表示をしていた部分は不要なので、潰されている。流鉄では「ワンマン」と表示されていたが、西武鉄道は不要なところはとりあえず同じ色で潰すようだ。
新101系が西武池袋線を走っていた頃は側面表示器は設置しておらず、ワンマン化の際に新たに取り付けられている。本線系統でも2008年ごろから使用されている黒地のタイプが使われている。わざわざLEDにするような路線でもなさそうだが、果たして。
ツートンカラーなので、横から見るとそれなりの雰囲気が漂う。シートの色に目を瞑れば、昔見た光景。
車内のシートモケットは登場時の茶色ではなく、ブルーの新しいものに替えられている。
先頭車両に移動してみた。ところどころにオレンジ色のベルトが巻かれているが、自転車をくくりつけるもの。2021年より、武蔵境側の先頭車に自転車の持ち込みが可能となった(時間帯に制限あり)。この日の乗車中にも1名、持ち込んでいる乗客と乗り合わせた。
この車両は42歳。てっきり、この頃の車両は全て西武所沢車両工場で製造されていたものかと思っていたが、そうとも限らないようだ。
武蔵境へ向けて出発
車内はそこそこ空いていたが、せっかくなので前面展望することにした。是政駅は最後部に改札があるため、先頭車両はほとんど人がいなかった。なお、オリジナルでは乗務員室の真後ろに2人掛けの椅子が設置されていたように記憶しているが、撤去されたようだ。
是政駅を出ると右側から側線が合流する。信号機が機能停止しており、使われているのかは不明である。
ドアが閉まるとゆっくりと走り出すが、そこまで速度は出さない。かつて池袋線で聞けてたモーターの唸り音までは期待できないのは仕方ないだろう。是政駅を出ると次の駅は競艇場前駅。地図上ではまっすぐ伸びる線路の左側には競艇場があるらしいのだが、よくわからなかった。
白糸台駅の到着する直前、京王線が高架に見える。白糸台駅と京王線の武蔵野台駅は徒歩で乗り換え可能となっている。
白糸台駅は、多摩川線の拠点となる駅。車両基地も備えられており、またホームも1面2線と交換が可能となっている。向かい側から赤電塗装の電車が入線してきた。
停車中の電車を横から見ると、やはりそれなりの雰囲気が出てくる。とは言っても赤電時代の西武線を知らないのだが(それに新101系って登場時から黄色だった気もするし)。
新小金井駅でもう一度交換。こちらは黄色い塗装。一週間だけでもいいから、池袋線のこの時代に戻ってみたい。
新小金井駅を出ると、右にカーブしながら中央線の高架に合流する。
そのまま、中央線と並ぶ高架駅に進入。昔は西武線と中央線下りホームが対面で乗り換えられたようだが、筆者が武蔵境駅を利用していた時期はちょうど高架工事の過渡期であり、あまり記憶に無い*。なお、保守点検などでJR線の線路を利用するからか、高架化された後も中央線と線路はつながっており、左手から合流している。
*多摩川線は仮線に移り、中央線は島式ホームになっていた。
終点、武蔵境駅に到着。座席いっぱいの乗客を乗せて、是政駅に向かって出発していった。
都心に程近い西武多摩川線、13分のショートトリップではあるが、のんびりした雰囲気を味わえる路線であった。
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